現在、食育の必要性が高く叫ばれています。しかしながら、ともすれば食育は「栄養学的なバランス」や「生産・流通」についての話が中心になりがちです。「家族全員が我が家で食卓を囲む」ことが必ずしもあたりまえではなくなりつつある現在、食育へのアプローチとして食事の原点である「一家団欒の楽しい食卓」とその延長である「弁当」に、竹下和男先生(香川県滝宮小学校長 当時)により脚光があてられました。

 竹下先生は小学生が自分一人で弁当を作り、給食の変わりに自作の弁当を食べる「弁当の日」を提唱し、平成13年から実践しています。これは食事を作る事にスポットをあて、子供たちが自ら料理をすることでたくさんの事を身を以て経験し、知識ではなく「体験/経験」として学ぶことのできる機会をもうけるこころみです。現在、全国でおよそ650校(小学校〜大学校)が弁当の日を実践していますが、東北地方では実施校はいまだ20校に届きません(「ひろがれ弁当の日」HPより)。

 今回は弁当の日の提唱者で「弁当の日がやってきた」の著者である竹下和男先生、助産師の立場から長年にわたり少年少女の生と性をみつめ、生の根幹にある家庭での「食」が現在危機に瀕していると説く内田美智子先生、大学での教育のかたわら弁当の日を推進し、食や農に関するワークショップを多数手がける佐藤剛史先生のチーム弁当力3名をむかえ、
・家庭における食の現状とあるべき姿、本来「食卓」が果たすべき役割
・学校教育において、「食」を扱う事の重要性の提起
・日本をとりまく食環境
・まず第一歩として、どう行動したら良いのか
等の食をめぐる問題を実例を挙げて、具体的に論じていただきます。

 また、福島で弁当の日に取り組む福島明成高校の菅野真理子先生にその取り組みと成果を紹介していただくとともに、神奈川で養豚業を営み、生産農家が生産から販売まで一貫してプロデュースし、「一次産業をかっこよくて・感動があって・稼げる3K産業にする」べく農業の枠組みを変えようと努力を続ける(株)みやじ豚から宮地大輔氏をおよびし、農業生産と流通についての課題と展望を語っていただきます。


開催概要
開催日 平成22年10月31日(日)
場 所 福島学院大駅前キャンパス
入場料 本博1日入場券で入場出来ます。
ただし会場は人数に限りがあるので、着席を希望される方は早めに会場にお越し下さい。 
 
10:00~11:30 弁当の日 竹下和男先生 1階ラウンジ
11:45~12:15 福島市福島明成高校の取り組み 菅野真理子先生 2階 218教室
  休憩
13:00~14:00 食卓からはじまる生教育 内田美智子先生 2階 218教室
14:00~14:30 生産者の立場から 宮治大輔先生 2階 218教室
14:30~15:15 弁当で家庭は社会はどう変わるのか 佐藤剛史先生 2階 218教室
15:15~16:00 質疑/討論 2階 218教室

ひろがれ弁当の日サイト

竹下和男先生 香川県/(元)小学校長
 弁当の日の提唱者で、退職した現在も学校教育のかたわら全国で講演活動を行い、食育について啓発活動を続けている。
「“弁当の日”がやってきた—子ども・親・地域が育つ香川・滝宮小の「食育」実践記」自然食通信社2003 「台所に立つ子どもたち—“弁当の日”からはじまる「くらしの時間」香川・国分寺中学校の食育」自然食通信社 2006 「泣きみそ校長と弁当の日」西日本新聞社 2010


内田美智子先生 福岡県/助産師
性の悩みを抱える思春期の子供たちとかかわる中で、最も重要なものの一つが家庭のコミュニケーションであり、家庭の食卓であると考え、佐藤剛史先生、竹下和男先生とともに「弁当の日」を推進するとともに、全国を回って家庭における食卓の重要性を説いている。
「ここ—食卓から始まる生教育」西日本新聞社 2007 *佐藤剛史先生と共著「いのちをいただく」西日本新聞社2009


佐藤剛史先生 福岡県/九州大学大学院助教 NPO法人環境創造舎代表理事 農学博士
専門は環境経済学・農業経済学で、大学で教鞭をとるかたわら、農や食にかかわる講演/ワークショップは年間100件にものぼる。食と農をその枠組みから考え、新しい試みを実践しながら里山再生活動、生物多様性保全活動、市民参加型のまちづくり、食育などの事業・活動を展開。
「金の卵—ニワトリへの愛情が黄金ビジネスを生む!」 築地書館 2010(共著) 「もっと弁当力!! −作って伸びる子どもたち」五月書房2010 「すごい弁当力!−子どもが変わる、家族が変わる、社会が変わる」 五月書房2009 「21世紀の教育を拓く 九州大学の教育改革の試み」西日本新聞社2009(共) 「いのちをいただく」西日本新聞社2009(共)
「弁当の日−食べ盛りの君たちへ−」西日本新聞社2008 「戦後日本の食料・農業・農村9巻」農林統計協会2005.